
経済産業省は、今冬の電力需給対策において、今夏に引き続き、政府として特別の節電要請は見送る方針を示した。今冬の電力需給は、卸電力取引市場の活用等が行われることで、厳寒となるリスクを織り込んだ上で、すべてのエリアにおいて電力の安定供給に最低限必要な予備率3%以上を確保できる見通しとなった。
中部エリアについては、現時点で予備率3%が確保できていないものの、電力広域的推進機関の逼迫時指示などを行わなくとも前日スポット市場等でのエリア間取引にて供給予備率3%は確保できることを確認できた。
同省は18日に開催した電力・ガス基本政策小委員会で取りまとめた、2016年度夏季の電力需給実績および2016年度冬季の電力需給見通しの検証結果等を公表した。この結果を踏まえ、今冬の需給対策は、最終的には内閣官房の「電力需給に関する検討会合」において決定する。
今冬の需給検証では、四国電力伊方原子力発電所の再稼働により、火力等の万一のトラブルへの対応力が増し供給力が強化されるとともに、節電の定着等により、東日本・中日本のブロック単位での予備率は上昇しており、今冬の需給は安定すると判断した。1月の予備率は、9エリアで8.0%、東日本3エリアで7.5%、中西日本6エリア8.5%を確保している。
ただし、北海道エリアについては、1月で予備率16.2%を確保できる見通しであるものの、他電力からの電力融通に制約があること等を踏まえ、追加的な需給対策を検討する必要があると指摘する。
需給ひっ迫へ備えるため、北海道エリア以外でも、
- 発電設備等の保守・保全の強化を要請
- 省エネキャンペーンの実施やデマンドリスポンス等の促進
- 電力広域的推進機関が電力の安定供給に必要な対応を講じるよう要請
などを行う方針だ。
中部エリアは市場取引等も加味して評価
今冬の電力需給見通しにおいて、中部エリアでは、現段階で、12月、1月の最大需要発生時の予備率が3%を下回る。しかし、供給力に計上しなかったエリア間の市場取引分(未契約分)を考慮すれば、予備率3%以上が確保できる見通しとなった。
具体的には、中部エリアの需給バランス評価(厳寒H1需要(1日最大電力)発生時)で、供給予備率が3%に達しないのは、小売電気事業者が、今後、卸電力取引市場や新たな相対契約等を通じて調達することとしている「調達先未定分」が影響していると考えられた。そこで、中部エリアについては、上記バランスでは考慮していない実需給までの市場取引も加味した供給力確保状況の検証を行った。
小売電気事業者が確保した供給力に一般送配電事業者の調達する調整力および発電余力を加えた場合でも、供給予備率3%は確保できないが、今後、小売電気事業者が卸電力取引市場や新たな相対契約等の締結を通じてエリア外からも調達する可能性のある供給力(約60万kW)のうち30万kWを加えれば、供給予備率3%は確保できる見通しとなった。
また、試算の結果、関西・中国エリアに存在する発電余力だけでも、中部エリアで不足している予備力は十分賄えことがわかった。今後、全国の発電余力が卸電力取引市場に投入される蓋然性は高いと考えられることから、最終的に中部エリアの予備率3%は確保できるものと判断した。
小売電気事業者が確保する供給力の評価方法の検討
今回の検証では、供給力は相対契約が確認できる等の確実なもののみ計上し、現段階では供給先未定の発電余力は、試算上は発電所所在地エリア内供給力とした。しかし、当日までにはスポット市場等が活用される蓋然性は高いと考えられることから、こうした流動的な供給力を想定上どのように扱うかという課題が残った。
今回、中部エリアにおいて、予備率3%を確保できていないという評価となったのも、これに起因するものであった。今後の市場活用の進展状況も注視しつつ、この課題を含む適切な供給力想定のあり方について、引き続き検討を深めていくとしている。
2016年度夏季の電力需給実績および2016年度冬季の電力需給見通しの検証結果等の報告書の内容についてはこちらから
【出典】
- 経済産業省 - 電力需給検証報告書を取りまとめました